図面を受取った時どこを見ますか?
どんな形状がやりにくいのですか?
設計のポイントは?




業者がこんなことを言ってはいけませんが、なかなか設計上の制約が多いのが真空成形です。真空成形がマイナーである所以でもあります。
ですが他のところにも書いているように、大小様々なサイズに対応し、多品種小ロットを製造するにあたって、トータルコストを考えると、真空成形は素晴らしい落としどころなのです。
図面を受け取りまして、私が注目するところを解説してみたいと思います。

第1:サイズを見ます。
第2:アンダーカットがあるかを見ます。
第3:材質を見ます。
第4:形状を見ます。(抜きテーパー、ピン角、凹部、凸部、カットライン)

それでは、それぞれ解説します。



第1.サイズが可能か

弊社の装置で成形できないサイズでは、どうしても 分割させて頂くか、ご遠慮させて頂くかのどちらかになってしまいます。分割するメリットとデメリットを挙げてみます。
成形可能なサイズは「どんなサイズまで出来る?」を参照して下さい。


メリット デメリット
・材料の調達が容易なもので出来る可能性がある。即ち、材料費のコストダウンが出来る可能性がある。
・高さ方向で分割した場合は肉厚が増す。
・継目が出来る為、外観デザインが崩れる、縦横方向を分割した場合は強度が落ちる。
・継ぐための材料費が増え、成形数が増える場合もあるので加工費も上がる。



第2.アンダーカットがあるか


次に見るのは、真空成形の鬼門、アンダーカット(オーバーハング)がないか確認します。
アンダーカットがあると、射出成形のような型構造をしていないので、成形品が型から抜けなくなってしまいます。逆を言えばこのシンプルな型構造が、樹脂型というものを可能にさせたり、型費が安い所以です。 アンダーカットのある製品を上手く作ってしまうのが最高の技術力なのでしょうが、正直申し上げると弊社にその実力はありません。
弊社でもこれまでの実験で、型費、材料費に費用を掛け、品位的にも猶予を頂ければある程度のものは出来るという結果を持っていますが、 製造業として、ご満足頂けるコストパフォーマンスが実現できるようになるまではご遠慮させて頂いています。

下に製品(カット済み状態)の断面図で多少説明しておきます。


図1 至極プレーンな形状で、問題ない形状です。
図2 断面のどこか一部でもこのような部分があると抜けなくなってしまいます。
アンダー部分が極短かったりする場合は、抜ける可能性もあります。
図3 一部アンダーカットになっています。このような形状でしたら出来ると思われます。
図4 この形状も一部アンダーカットですが、出来ると思われます。


ご検討頂けるようでしたら、アンダー部のみ接着やビス、リベット止めといった手法が可能です。




第3.材質は何か

各材料に関しては、「シート材料にはどんなのがある?」を参照して下さい。
カット方法をどうするかと言う事はお客様とご相談致しますが、弊社は炭酸ガスレーザーでのカットが多いので、特に注目します。
お客様の指定が、塩ビやアクリル変性塩ビなど、塩ビ系であった場合、レーザーの装置を犯してしまう為、不可能だからです。

あとは、ご希望されるロットが小さい場合は、少数ロットでの入手が可能な材料なのか判断します。





第4.どんな形状か

形状に関してはいろんなところを見ますので、それぞれ説明します。
「出来る」にも、形が出来る、という意味と、価格、品位が製品として成り立つものが出来る、とでは大違いです。後者が正しいのです。 正しいものをつくるために、以下のことは大変重要です。


●全体形状と抜きテーパー
真空成形で一番難しいのが直方体で背が高い形状です。 どうして問題なのか見てみましょう。「抜け」(離型)という概念と「品位」という概念があります。
理想的な形状に近づけて行く為には、ポイントのところを見てください。


抜けの問題 品位の問題
図1 図2
真空引きをして、型とシートが密着したまま冷却している間、シートはどんどん収縮し、矢印のように型を締め付け、ロックしてしまいます。
例えばアクリルやABSは約7/1000、オレフィン系のPPやPEですと10〜20/1000もの収縮率があります。冷却が終わって離型する際も、側面の摩擦は相当なものです。設計の許す限りの抜きテーパーが必要です。
主にブリッジやドラグが容易に想定されます。
(ブリッジとドラグに付いては「真空成形にはどんな不具合がありえる?」を参照して下さい。)


ポイント
図1 図2 図3 図4
全てがピン角で抜きテーパーもない状態です。 上面のピン角にRが付きました。上面のロックが多少開放されます。まだ抜けないと思われます。 他の部品との接続を考慮し、下の部分のみテーパー無し、上はテーパーをつけました。 側面全てにテーパーが付きました。側面コーナーもRがついて生産し易くなりました。


左から右に向かって、抜け、品質ともに向上していきます。


●凸部分

直方体などの背の高い凸部分があるとします。まずブリッジを懸念しまが、ブリッジが製品内と製品外に渡りそうな場合は、いろいろな回避手段が考えられます。
もしこれが、製品内同士で渡るであろう型形状の場合、手段が非常に限定されますので、お客様との相談が必要になってきます。



●凹部分

例えば何かのカバーを作った際、ボルト止め用の小さくて深い円筒形の凹部が設定されることが良くあります。間口が狭くて深い凹。なかなかこれが悩ましいのです。
図で説明します。

図1 例えば断面がこのような円筒形の凹のある型で成形するとします。
図2 シートを加熱し、型がシートに当たった瞬間です。
この凹の内壁全ては、図のオレンジの部分の肉が引き延ばされて出来ます。青い部分は型が当たって冷やされる為、伸びにくく、 凹の内壁の肉厚にはほとんど貢献してくれません。
図3 この凹の成形品の断面図はこんな感じになるでしょう。
下に真空引きされて行くに従って、肉はどんどん壁面に使われ、底の方ではとうとうオブラート状態に。
図4 底面の厚みを稼ぐ為に、「プラグ」と呼ばれるものを使うワザがあります。
これは結構有効で、図のように底面の肉厚を稼ぐことが出来ました。ただし、結局使っている肉の面積に代わりは無いので、側面が薄くなります。 基本的には側面を取るか、底面の肉厚を取るかという選択肢になります。
図5 他の考え方で内壁の肉厚を稼ぎたいときは、シート材料の厚みを増やす他、 図のように「浅くする」、「間口を広げる」、「テーパーを付ける」など設計の許す限り型形状を変更するのが有効です。


シートの厚みで凹部内の肉厚はコントロールできますが、その為だけに必要以上の厚みのシートで成形するのは非常にもったいないことです。
ご説明したとおり、凹部は「浅く、広く」が基本です。



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