真空成形にはどんな不具合がありえる?



真空成形で発生しやすい不具合の代表選手は、何と言ってもブリッジと言われる不具合と、ドラグやドラグラインと呼ばれる不具合です。
いったいどんなものなのかご紹介しておきます。もし設計をされているかたでしたら参考にしてみてください。



その1.「ブリッジ」

まずはブリッジです。英語のBridgeですから橋です。
それでは、ブリッジの出来るまでを順を追って見てみましょう。


図1 例えばこんな形状の型が天板に乗っています。もう見た瞬間から怪しい、いや完全にブリッジが起こるでしょうという形状です。
図2 とりあえずトライしてみましょう。
シートを加熱し、型が上がってきた状態で、まだ真空引きしていません。
シートはこんな感じに四角錐の上半分を切ったような姿になっています。
図3 さあ、真空引きです。シートの重みと、真空引きで図のようにたわみはじめます。理屈で考えてもそうなのですが、側面部分からがたわみやすいのです。
問題はシートの角と型上部の角とを結ぶ肉です。どう見ても余ります。私はここで手を合せてよく拝みます。
図4 ああ、やっぱり!!
先程のシートの角と型上部の角とを結ぶ余った肉が 型に密着する前につまんだようになってしまいました。これがブリッジです。4隅全部に出てしまうこともあります。これがカットラインより上に入っていたらもう製品とは呼べません。


ブリッジと戦うとき

ブリッジが出現するには、ある程度法則があります。シート材質、型の高さ、型の形状、成形データなど、パラメータが多く、 まず数値化やシュミレーションができないのでうまくお伝えすることが出来ません。具体的には秘密ですが、とにかくあらゆる手を尽くして回避へ努力します。経験則があっさりと否定されることもありますので、真空成形は本当に奥が深いなと思わされます。 型形状として、回避の方向性としての情報だけまとめてみます。

1.「型の角は丸く」:上の図のシートの角と型上部の角とを結ぶ余った線状の肉が正体ですから、丸いほど線状にはなりません。
2.「型は低く」:背が高いほど余る肉が増えてしまいます。型が丸ければ問題ありません。
3.「ツインタワーは危険」:シートの角とではなく、型同士で同じことが起きてしまいます。

究極に難易度が高いものは背の高い直方体が何本か立っている形状といえます。反対に半球上の型でしたらブリッジが起きようもありません。ただし、これらのことを気にしていたらとても設計など出来ませんので、 選択肢があるのでしたら選んで頂くと試作、量産はスムーズに行くかと思いますし、知っていて頂けるだけでも、お打合せもスムーズかと思います。




その2.「ドラグ」

次はドラグです。ドラグラインと言ったりもします。英語のDragで、引きずるなどの意味があります。
今度も、ドラグのしくみを図で見てみましょう。


図1 一番簡単な例を断面図にて説明します。
まずシートが加熱されます。シートは百数十℃になっています。
図2 型が上がってきて、シートに接触した瞬間です。
この時点で、シートの温度は型に吸収され、接触したシート部分の温度が急激に下がります。
型当たりした部分と、していない部分ではっきりと温度差が出来ます。
図3 型が上がりきって真空引きです。真空引きが始まると、この型形状の場合、 シートは引き延ばされながら、下方向にグッと引っ張られます。
引っ張る力が強いので、上面の冷えた部分も引きずられ(Drag)多少側面に回りこみます。 このとき、シートの熱い部分はよく伸び、冷えたところはよく伸びませんので、側面上に肉厚差が出るところが発生します。
図4 これまでの図は断面図でしたが、製品で見てみましょう。
肉厚差のあるところが、製品面には線のような姿になって確認できるようになります。これをドラグラインと呼んでいます。


ドラグと戦うとき

意外なところに発生したり、考えていたところに出なかったり、神出鬼没なのがドラグです。ブリッジよりも圧倒的に想定し難いのですが、ブリッジよりは対処がスムーズに行く場合が多いという感覚があります。テクニックです。
ただ、ブリッジが出るような形状の場合など、ブリッジを消したらドラグが出た、こっちのドラグをを消したら別のドラグが出た、など課題が多いと落としどころが無くなってしまうこともあり、非常にあなどれません。
ドラグは外観上の問題ですので、製品の用途によって全く問題視されない場合がありますし、程度がいろいろありますので、 お客様にここです、とお伝えしてもわからない、といったこともあります。私たちは外観製品が多いので、可能である限りドラグ無しが当然の基本です。
回避の方向性を考えてみます。

1.「型の角は丸く」:冷めた部分が側面にまわり込む際、アールがあったほうが引っかかりが少なく、肉厚差が出難くなります。
2.「型は低く」:解消は成形データに大きく依存しますが、装置のサイズ、構造の限度上、型が高すぎると対処が不可能になります。
3.「材質はハリのあるものを」:シートは加熱すると柔らかくなり、そして伸びます。加熱し、成形に充分な伸びを満たしたシートの柔らかさは、材質によって異なります。
また、同時に成形前の板の状態に戻ろうとする張力のようなものがあります。私たちは「ハリ」と呼んでいます。ハリが良い材質を使うと、ドラグが出難いという感覚を確かに持っています。材質で言うと、 例えばアクリル>ABS>PPと言った感じでハリに差があります。同じ材質でも、メーカーによって違ったり、色によって違ったり、驚かされることもあってなかなか興味深いところです。

やはり材質や形状は、成形業者である私たちの意向が及ぶところではありませんので、さらにテクニックを追求し努力し続けて行きたいと思います。 ご相談頂ける際は、外観をどれくらい重視されるかといったことを伝えて頂けると助かります。




ブリッジでもドラグでも、良い成形品をつくるには型の低さが非常に大切であることがまとめとして挙がります。この物理的な数字は、使用する装置のスペック、型形状とサイズ、カットラインによって変わってきますので お伝えできないのが残念です。
真空成形はアナログだな、といつも思わされます。当たり前かも知れませんが、季節、材料ロットでデータを変える必要があったり、成形中にもデータを変えたりします。前回までのデータが通用しなかったり、結構職人芸です。だからこそ面白い成形だなと思います。



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